子育てあんずの本棚

子育て中に不安になったとき読んだ本

育児の百科(上・中・下)松田道雄 著

定本 育児の百科 松田道雄

下の子が小学生となり、振り返るとこの本も卒業していたことに気づきました。

この本の著者である松田道雄先生は明治41年生まれの小児科医です。
初版は1967年ですが、時代に併せて改訂され、半世紀を超えて読み続けられています。
上巻は誕生前~5か月まで、中巻は5カ月~1歳6か月まで、下巻は1歳6か月~6歳までの赤ちゃん・子どもについて網羅的に書かれています。
具体的に言うと、このころの赤ちゃん(子ども)、そだてかた、環境、集団保育、かわったこととあります。※こどもの病気については医学の進歩とともに改訂が必要であるため割愛されています。

 

とてつもないボリュームなのですが、冒頭の「この本のよみかた」で一度に全部読む必要はなく、該当する月や年のところを読めばよいと示してあるので拾い読みオッケーです。私も読み切れてない部分の方が多いと思います。
私にとってこの本はお守りのようでした。子どもが赤ちゃんの時は「この時期の赤ちゃんってどんな感じなんだろう。次の月はどうなっていくんだろう。何に気を付けたらいいんだろう」という情報を入れるために読んでいました。幼児になってくると自我もはっきりしてくるので、うまくいかないことが増えたのですが、開くとホッとする本です。
例えば食事です。1歳~2歳ごろの我が子はご飯をあまり食べませんでした。元気ではあるけどそこが心配で日々のストレスだったりしていたのですが、この本を開くと「この年の子どもは1年に2キロしか太らないのでそもそもご飯をあまり食べない。無理に食べさせるより外で遊んで体の鍛錬をした方がよい」ようなことが書かれており、納得!となりました。また、よく食べる子の食事の例と小食な子の食事の例を示してくれたりして、結構幅があるのが当たり前なのかと安心したりしました。

 

こんなことを書けるのも、臨床医として大勢の子どもとその親と長年接してきたからだろうなぁと推測しました。語り口も優しく、軽妙で、とても詩的。


私が大好きな「感じやすい子」の一部分を抜粋します。

なにごとにも感じやすい子どもがいる。ちょっとした事で泣くので、母親は、気の弱い子だと思っている。~略~こういう子どもを、劣った子どもだと思ってはいけない。~略~人間のなかには、そういうデリケートな性質の人がいるのだ。世界を美しくしてくれるのは、そういう人だ。その子のもっている感じやすい心は大事にして、おとなになってももちつづけられるようにそだてたい。

定本 育児の百科(下)332頁 4歳から5歳まで 468感じやすい子 より

 

また性教育にも触れているところがあり衝撃を受けました。

男と女との相違は器官にあるのではなく、その人間にある。男は女に、女は男にいかに対すべきかは、人間と人間との関係としてとらえるべきで、性器の関係として関係としてとらえるべきではない。

定本 育児の百科(下)516頁 学校へいく子ども より

その後に、子どもの人見知りがはじまる頃から、子どもは父親と母親の関係性を見つめているので、すでに性教育が始まっていると言っています。
松田先生は明治生まれだけど、未来から来たのかなと思うくらいですが、母親たちの声にならぬ声を、聴き続けた先生だからこそ当たり前のようにサラッと書けるのだと納得します。

 

久しぶりに拾い読みしてみると、ちょっと古いかなという記述ももちろんあるので注意が必要ですが、大方は50年前の本とは思えないほど母親を勇気づけてくれます。
親はもちろん、子どもと接する人、興味がある人は読んでみてください。
松田節のとりこになること間違いなしです。